竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 それなのに、クリスは気付けばエリスティナを愛してしまっていた。
 番だから、ではない。エリスティナしか知らないから、などと言わせる気もない。
 クリスは、ささいなことで喜び、遠くにいると言う他人の苦しみを悼み、自分だっておびえているのにクリスを守ろうと手を伸ばすエリスティナだから愛したのだ。

 卵が先か、鶏が先か。
 その言葉にこたえるのなら、クリスが愛したエリスティナが、たまたま番だった、ということだ。

 クリスは、このことを己の人生の幸いだと思った。
 愛した雌が、自分と結ばれる定めだと知って、喜ばない雄がいるだろうか。
 クリスは、あの時幸せの絶頂にいた。
 そんな風に浮かれていないで、周囲を見張っておけば、あんな悲劇は起きなかったかもしれないのに。
< 140 / 315 >

この作品をシェア

pagetop