竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「お前が――エリーを――」
頭の中で、ぴしり、ぴしりと音がする。
何かが割れるような、ちぎれるような音。
背がぱきぱきとひび割れて、中からガラスのような翼が姿を現した。
「なんだ、劣等個体でも竜の形をとれるのか。……いや、これは、まさか」
「たかだか――竜王風情が、ふざけた真似をしてくれるなよ」
「お前――いや、あなた様は……」
瞬間、世界の膜が一枚、剥がれ落ちた。
否、そう感じただけだったのかもしれない。クリスの思考が冴える。クリスの額に、透き通った角が現れる。
それは、劣等個体としての戒めを解き放ち、今、クリスが竜王として覚醒した証だった。
「…………」
クリスが手を前へ突き出すと、その場に黒炎が現れる。それは蛇のようにうごめき、リーハの体へと巻き付いて、逃げようとするリーハを拘束し、その体を燃やした。
焼けただれ、落ちてゆく皮膚。肉の焦げる臭いがして、クリスは吐きそうになってえずいた。
しかし、リーハは腐っても竜王だ。まだ衰えぬ、代替わりには早すぎる、力を持つ竜王。
クリスの覚醒がこんなにも早まらなければ、まだ全盛期と言えたはずの竜王、リーハ。