竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 70年目にクリスは王宮へと向かった。
 エリスティナが生まれてくるのなら、エリスティナの苦しみを取り除かなければいけないと思った。
 人間貴族の廃止、悪役王妃という噂の払しょくを。

 人間を家畜とする、歪んだ倫理観を消し去ることを。
 本当なら、もっとはやくに手を付けなければならなかった。

 なぜなら、クリスは竜王として目覚めたのだから。
 竜王として即位する資格があったのに、70年もの間、名義上の竜王はリーハのままだった。

 幽閉されているために、竜王としての役割が果たせなくとも、隔絶された竜種と人間の間では情報を回すことすら難しい。

 民草は、今も竜王はリーハなのだと思っていた。
 生きたままで燃え続けているだろう、カヤとリーハのことを思いだす。

 あんなものが――あのような――愚かしい存在が王だなどと笑わせる。
 けれど、最も笑いものにされるべきは、間違いなくクリスだった。
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