竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 リーハがカヤをかばうように手に力を込めたのが見えた。
 驚いた。こんな風になってもまだ、正気を保っているのか。

「……頼む」

 リーハが、懇願するように、がらがらにしゃがれた声で言った。
 こんな番でも、守ろうとするのかと思った。感心に近い思いだった。
 だからと言って、許せたかといえば、答えは否だが。

「私は、どうなってもいい……だから、カヤだけは、カヤだけは……許してやってほしい」

 リーハの肌がまた、ぼろりと剥がれ落ちる。
 けれど――けれど、クリスは続く言葉を止めることはできなかった。

「僕も、エリスティナのことを、そう思った」
「えり、すてぃな。ああ……そうだな……」

 リーハの目にはもう眼球が残っていない。焼ける過程で溶け落ちたのだろう。竜王の再生能力の限界に近付いているのかもしれない。

「私は、あの娘を殺したんだったな……」

 リーハはそう言って、一度口を噤んだ。
 嗄れ声で、咳まじりのひどい言葉。クリスは、どこか凪いだ目をしてそれを聞いていた。
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