竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「今回お前を娶ったのは、重鎮たちがそろそろ子を作れとうるさいからだ。しかし我はまだ番を見つけていない。だが体裁だけでも整えねば奴らは納得しないだろう」
「私を……隠れ蓑にすると?」
「フン、先ほどの言葉は訂正してやろう。まあまあ頭が回るようだ。そうだ。お前は形ばかり私の伴侶としてここにいてもらう。我の番が見つかるまでな」
なんだそれは。
エリスティナは思った。こんなにも、沢山の幸せをあきらめて、大好きな家族とも別れて来たのに、そんな空虚な場所にいなければならないのか。
竜種は千年も生きるという。だから番が見つかるまで何百年でも待つと聞く。
……下手をすれば、エリスティナの命が終わるのが先かもしれない。
エリスティナは泣きたい気持ちになった。
姉たちもこんなことがあったのだろうか。この国の人間には嫌なことを拒否する権利もないのだ。
エリスティナは……けれど、エリスティナは笑った。
奥歯が砕けそうに、みしみしと鳴っている。
力を込めて、笑顔を作る。