竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
リーハの目から、血に汚れた涙があふれる。
絶望にまみれた嗄れ声。それを聞けば胸がすくと思っていたのに、今のクリスには喉奥から染み出るような苦しみが増しただけだった。
クリスは黒炎の魔法を解いた。
けれどやはり、リーハの治癒能力はもうほとんど残っていなかったのだろう。
肉体が治ることはなく、兵士によってカヤと引き離されても抵抗らしい抵抗をできていなかった。
その腕から無理矢理に落とされたカヤの、落ちくぼんだ眼窩と視線が合う。
「あー……」
狂った女は、引き離されたことにも気づけないのか、ただそう口にして、兵士に運ばれていった。
ひと月ののち、リーハは死んだ。
肉体の摩耗、ではなく、番と引き離されたことによる衰弱死だった。
その三日後に、カヤも後を追うようにして息を引き取った。
罪人として、歴代の竜王の墓地にも埋葬されないふたりの話を聞いても、クリスは何とも思わなかった。
自分でも非情だと思う。
それでも、同じ選択を迫られたとして、クリスは同じことをするだろう。
番が竜種をそうさせる。番は、呪いだ。もう一度、そう思った。