竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 まだ探したことのない場所を探して、あてもなく城下を歩く。
 エリスティナの生まれ変わり――魂の気配はたしかにあるのに、その姿も、形もないことがクリスを焦らせた。

 早く、早く見つけないと、と。
 近くにいないと守れない。だから、クリスは必死になってエリスティナを――その魂の持ち主を探した。

 気持ばかり焦って結果が伴わない。クリスは気付けば速足になる歩みを意識的に緩め、はあ、と息を吐いた。
 風が生ぬるくて不愉快だ。

 強く吹いてくる風を振り払うように前を向いて――ふと、立ち止まった。
 シチューの香りがする。
 クリスは香りのするほうへ無意識に足を向けた。商店街を通って細い道へ入る。まもなく、古く小さなアパートが姿を現した。
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