竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 エリナが茶化して言う。クリスはわざとらしくうなだれて見せた。
 そうやって、楽しげに会話をできることが、ただただ嬉しい。

「なんでかしら、あなたのこと、嫌いになれないのよ。これからよろしくね、クー」

 エリナがそう言って手を差し出す。その手を取って、握手をした。
 手の柔らかさは、エリスティナとは違う。肌の色だって、違う。
 でも、そのまなざしは、たしかに「エリー」のものだった。

 ここにいたのだ。ここに。
 ここに――いてくれたのだ。
 どうしようもない気持ちになって、クリスは笑った。

 愛しくて、幸せで、泣きたいような、叫びたいような気持ちになる。

「……やっと、見つけた、僕のエリー……」

 番として、結ばれなくともいい。エリナが幸せなら、それがクリスの隣でなくてもいい。
 クリスのエリーが笑っている。それだけで、クリスは満たされている。
 小さなつぶやきは、どこに届くこともなく、エリナの皿を洗う音にかき消されていった。
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