竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 ――それを、許せなかった。
 いいや、許してあげられなかった。
 今エリナが一人でどこかに行ってしまえば、エリナを害そうとする者からエリナを守る手段がなくなってしまう。

 かといって、その理由を正直に告げて、エリナが納得するとは思えなかった。
 そもそも、殺された過去があるのだ、相手もわからぬ恐怖を、エリナに味合わせたくはない。

 これはクリスの勝手だ。もっといい方法だってきっとある。
 けれど、クリスはエリナに自分の正体を――自分が、あの情けなく漸弱であった雛竜であると明かせないし、エリナに迫る危機をエリナに教えることもできはしなかった。
< 194 / 315 >

この作品をシェア

pagetop