竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 そこに、一部とはいえ「クリスがエリナに恐れられたくない」という理由があるなら、これはクリスの身勝手な庇護欲でしかない。

 だが、もうそれしかない。すべてが丸く収まる方法を考えるには、時間が圧倒的にたりない。
 エリナが彼女自身を、彼女のやり方で守ろうとするなら、クリスはクリスの譲れないもののために、クリスのやり方でエリナを守る。

 ――だって、もうあなたを喪えないから。

 翌日、クリスはエリナを迎えに行った。
 仰々しい馬車で、エリナこそが竜王の番であると民草に知らしめた。
 それがある程度の抑止力になると思ったからだ。

 これで、エリナの顔は城下町に知れ渡った。
 雑念が入ると魔法の質は落ちる。だから、エリナを狙うものが少しでも動きにくくなればいい。

 クリスは、そう思って目を伏せた。
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