竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 ――やめてよ、クー……。あなた、竜王、じゃ、ないんでしょ……。そんなこと言わないでよ……。

 エリナはおびえていた。竜王という、トラウマを、古い傷をえぐるような存在に、体を震わせて、目に涙を浮かべて。
 エリナ自身を傷付ける刃のような言葉を封じたくて口づけた、唇の感触を思い出すように唇をなぞる。

 エリナの唇は、柔らかくて甘く、こんな時でなければずっと触れていたいほどに愛しくて。
 不謹慎だ、と自分をせせら笑って、クリスはエリスティナの涙を思い出した。

 泣かせたくなかった。あのちいさなアパートで、幸せそうに微笑むエリナを傷付けたくなかった。
 けれど、そうしたままでいるには、クリスの心は弱すぎた。
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