竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 この手から零れ落ちた、愛しいだけの存在。エリスティナを失ったあの日の傷はまだ癒えていない。
 ――否、一生、癒えることはないのだろう。傷を抱えて、最期の瞬間まで生きていくのだ。

「ごめん、ごめん、エリー」

 クリスは、エリスティナの部屋の、分厚いドアに背を預け、ずるずるとへたり込んだ。
 あなたを傷付けた。あなたを怖がらせた、あなたを泣かせて、けれど、それでも安堵している。
これでエリナを守れると、ほっと息をしている。

「怖がらせて、ごめんなさい……」

 だから、絶対に守り抜く。
 あなたから笑顔を奪ったのだから、もう二度と、誰かの悪意によってあなたを損なわせたりしない。

 ――そうしたら。
 そうしたら、たった一度、一瞬でいいから、ねえ、エリー。
 もう一度、笑ってくれますか。
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