竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 これで、ゆっくり考えられる。
 クーのこと、番のこと、それから、どうしてエリナは急にここに連れてこられたのかということ。
 だっておかしいじゃないか、竜種の番に対する執着心は、人間が人間の恋人に向けるものとはけた違いに重い。

 エリナがクーの番だと言うのなら、エリナはクーと出会ったその日に攫われていたっておかしくはなかった。
 カヤのように、出会ったその日に王宮へ連れてこられ、王宮の奥深くへ隠されて、女性以外との接触を断たれて……そういう生活を送ることになっても、まったく不思議ではなかった。

 ふいに、からん、からん、と音がする。王宮の、時を告げる鐘だろうか。それにしてはずいぶんと近く感じる。

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