竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 ――番だと気づかなかった?そんなわけはない。
 竜種は己の番を一目見た瞬間に把握する。エリナが番だということを、クーが気付かぬはずはないのだ。
 考え込んで、眉間にしわを寄せるエリスティナの前に、ふわりと、白い綿毛が飛ぶ。

 はっとそちらを仰ぐと、エリスティナの近くをふわり、ふうわりと風と遊ぶように浮かんでいる、タンポポの綿毛があった。
 エリスティナの髪に流れ着いてきた綿毛の一つを手に取って、目を瞬く。

 貴族の家では好まれない、いわゆる雑草であるタンポポ。
 生命力が強く、どこにでも自生するこの花は、不帰の森にもいくらか生えていた。

 ――春、クリスが摘んできてくれたのを、食卓に飾っていたっけ。

 エリナが周囲を見渡すと、中庭だと聞いていたはずのそこは、一面のタンポポ畑だった。
 雑草がはびこっている、というていではない。
 きちんと世話をされ、花が美しく咲くようにと調整されて植わっているタンポポに、エリナは驚く。

「どうして……?」

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