竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 フードの人間がせせら笑って言った。

「あの女は代替品だった。その生まれ変わりであるお前も、所詮は代替品にすぎない。ただ番というだけで連れてこられたのだから……。あの竜王が愛しているのは、今も昔も、ただひとり。あの王をかつていつくしんだ人間のみ」
「クーの、育ての、親……」
「そう、かの竜王に愛された女。そして、お前はその代替品」

 くらりと、視界が回る。
 頬が冷たい。濡れているのだと気づいて、エリナはそれを指先で拭った。

「わた、し、代替品……」
「そうだ。お前は、結局誰かの代わりの、穴埋めにしかなれぬ」

 わかっている。そんなのとっくにわかっていた。
 エリスティナはどこまで言っても「カヤの代替品」にしか過ぎなかった。
 からん、からん、と鐘の音がする。
 エリナが物心ついたころから聞いてきた鐘の音が。
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