竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

「前竜王と、その番……その二人が使っていた部屋は、僕にはあまりよいものではなかったので、全部処分してしまったんです」
「処分って」

 リーハとカヤの使っていた調度品は、けして少なくはない。
 そのすべてを処分してしまうのは、いくらなんでも思い切りがよすぎる。
 そう思ってクーの言葉を繰り返したエリナは、ああ、と納得した。

 ――それで、部屋にはカヤの気配もなにもなかったのね。

 安堵した理由のひとつなので、エリナはもったいないでしょう、とクーを叱る気にはなれなかった。

「番のために使われる予算がありますし、僕個人の資産もあります。好きなものを好きなように作ってもらえれば……その」
「ええ、必要な分を買わせてもわうわ」

 無駄には使わない、と言外に口にしたエリナに、クーは目を瞬く。
 それが、エリナに贅沢をさせたいみたいでエリナは笑ってしまった。
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