竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 ここに来てから、エリナはクーに甘くなってしまっているような気がする。
 あんなに怖かったのに、いざ来ると肝が据わってしまうと言うか。
 眠ったからだろうか。少しひりつきかけた空気を緩めてくれたエルフリートにも感謝だ。

「……もしかして、給餌?」

 竜種にはそういう習性があるときいたことがある。
 番に対する愛情表現の一種で、竜種は食事を自分の手から取らせることに喜びを覚えるのだと言う。
 エリナの言葉に、クーが一瞬呆けた顔をして――次いで、その耳を赤く染めて口を押えた。
 そんなつもりは、すみません、と言い訳しているあたり、無意識だったのだろう。

 わかりやすく求愛されて、エリナも顔を赤らめる。
 気を取り直すように、もうおなかいっぱいよ。と口にした。

「もう食べられそうにないわ。クー、本当に食べられるの?」
「はい。言ったでしょう?僕、大食いなんです。では僕もいただきますね」
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