竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
適当に選んだなら数冊はおいてありそうなものだが、エリナが知る限りの「悪役王妃エリスティナ」にまつわる本は――それも、徹底的にその題材を避けているかのようにして――並べられていなかった。
エリナは尋ねる。
「悪役王妃の本は、ここにはないのね」
なんとはなしに聞いたことだった。
特に理由もなく、そこにないから聞いただけ。だって、街では当たり前のように、何種類もおかれてあるのだ。どれだけ人気なのだとは思うけれど、わかりやすい勧善懲悪ものは大衆に受け入れられやすいのだろう。
それがここにないことを不思議に思っただけだった。
けれど、エリナはその言葉を口にしたことをすぐに後悔することになる。
エリナの言葉を聞いたクリスの顔が目に見えて曇った。
言ってはいけないことだったのだ、と察して、エリナは慌てて両手を振った。
「ち、違うの、違うのよ、ないってことに文句があるわけじゃなくて……。その、街では普通に流通してるから、一冊もないのは不思議だなって……」
「嫌いなんです。それ」
クーが冷たい声を落とした。
エリナは尋ねる。
「悪役王妃の本は、ここにはないのね」
なんとはなしに聞いたことだった。
特に理由もなく、そこにないから聞いただけ。だって、街では当たり前のように、何種類もおかれてあるのだ。どれだけ人気なのだとは思うけれど、わかりやすい勧善懲悪ものは大衆に受け入れられやすいのだろう。
それがここにないことを不思議に思っただけだった。
けれど、エリナはその言葉を口にしたことをすぐに後悔することになる。
エリナの言葉を聞いたクリスの顔が目に見えて曇った。
言ってはいけないことだったのだ、と察して、エリナは慌てて両手を振った。
「ち、違うの、違うのよ、ないってことに文句があるわけじゃなくて……。その、街では普通に流通してるから、一冊もないのは不思議だなって……」
「嫌いなんです。それ」
クーが冷たい声を落とした。