竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

「昔、大切な人を亡くしたんです。大切な、本当に、大切な……」

 クリスはそう言って、エリナを見つめた。まるで、エリナの反応を確かめているようだった。
 エリナは不思議に思って、けれど、何か大切なことを思いだしかけている気がして。
 喘ぐように息をして、エリナはなにか言おうとして――。

 その時、なにか、鐘の音のような耳鳴りに、思考をかき消された。
 私は、今、何を言おうとしたんだっけ。

 点と点が線でつながったような、そんな感覚。
 目の前のクーが誰かにかぶって、それはわかるのに、喉元まで来ている答えがどうしても出せない。

 頭が痛い。こめかみを揉んで目を閉じたエリナの体がぐらつく。

「エリー!」
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