竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
エリナは、それを知りたくなかった。
――クーは、やさしい。
クーを見上げる。
――クーは、私を傷付けようとしない。
きっと、エリナをここに連れてきたことにだって、理由がある。
そう、思った。そう、思えてしまった。
――だって、私、クーのこと、ちょっとだけだけど、知ってる。
そのたった少しの「エリナの中のクー」が、エリナを傷付けようとして、竜王の番として連れて来たわけであるはずがない、と主張する。
エリナはそれに頷いた。
そう思う、そう思いたい。だって、エリナは――……。
エリナはクーの体から自分を引きはがしてかぶりを振った。
クーがエリナを心配して声を上げる。
ほら、クーがそんなだから、エリナはクーを――になってしまう。
カヤのようになりたくない。
誰かを傷付けても、想いを正当化する人間になりたくない。
エリナはこの感情がこわかった。ひとを変えてしまう、この気持ちが怖くてならない。