竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
だからこそのエルフリートだ。精霊竜である彼は、場所という概念が薄い。空気のようにどこにでもいられるのだ。
数多くの分霊体を持つ彼は探しものをするのにぴったりの能力を持っていた。
エルフリートはにやりと笑う。
「侮るなよ小童。私に探せないものなどありはしないさ。分霊体のひとつが例のアパートに魔法陣を見つけた。それも一つや二つじゃない。執念深いことにその数は10を超える。一般人には見えないように、細工までしてね」
「なるほど。その魔法陣と同じ気配を探せばいいと?」
「そう、焦っているのだろうね。感情の昂りが見えるような魔法陣だ。妨害工作がされているが、なに、君ならそんなものの一つや二つ、力技で解決できるだろう」
エルフリートがクリスに握らせたものは、魔法陣を描いていたインクだ。粉々になって、ほとんどありはしない。けれどこれで十分だった。