竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 やはり、なにか別のものに守護されている。クリスがそう歯噛みした、その時だった。

 魔法回路の、クリスの意識の中、女が視線を上げる。
 ぎい、とにらみつけて来た黒い瞳は、洞のように虚ろだった。
 しかし、その悪意、憎悪――その色に、見覚えがある。

 クリスが追撃をかけんとその手にさらに魔力を込めた一瞬、女の姿は霧のように掻き消えた。
 まるで、なにかが女を攫って行ったようだった。

「……っ」

 クリスの意識が体に戻る。開かれた瞳孔に、ただならぬ気配を察したのだろう。エルフリートがクリスを呼んだ。

「陛下、どうしたんだい!?」
「……あの女が……」
「え?」
「――カヤが、生きていた……」

 その言葉に、エルフリートは目を見開く。
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