竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

「ごきげんよう、カヤさま」
「……」

 パンの配給を受けに行った王宮の廊下で、カヤとすれ違ったエリスティナが会釈をして道を譲る。
 それにまったくの無視を決め込むカヤに、今更何かおもうこともない。

 ただもらったばかりのパンを大事に抱きしめ、頭を下げ、早くカヤたち一行が通り過ぎて行ってくれないか願うばかりである。

「ねえ、ちょっと」

 ふいに、カヤが口を開いた。

「黴臭くないかしら」

 そう言って鼻をつまむカヤの視線の先には、エリスティナが大事に大事に抱えている紙袋がある。
 はっとしてそれを隠そうとしたのがまずかった。

 美しいおもてに醜悪な笑みを浮かべたカヤは、エリスティナを辱める理由ができたと思ったのだろう。
 召使たちに命じて、エリスティナから紙袋を奪い、中身を床にぶちまけた。
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