竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~


 先生に甘えたくて、わざと風邪をひこうとする男の子もいたっけ。
 そんなことを思いだして――そんなことを、考えて、エリナは静かに口を開いた。

「ずっと、考えてた。……私がここにいる意味はなんだろうって」

 エリナは、なんのためにここに連れてこられたのだろう。
 クーの番として?クーがただエリナをそばに置きたいと思ったから?
 きっと、そのどちらでもない。
 クーにはなにか、エリナをここに――王宮へ、連れてこなければならない理由があったのだろう。

「クーは、きっと自分勝手で私をここに連れてきたわけじゃないんだろうって、思ったの」

 中庭の、一面のタンポポを思い出す。
 素朴な花だ。けして、身分の高い貴人に尊ばれる花ではない。
 それを好むクーが、エリナを傷付けてよしとする、竜種によくある高慢な存在であるはずがなかった。
< 242 / 315 >

この作品をシェア

pagetop