竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 エリナは、エリスティナだったから、理解できる。

「もう、いやなの、あなたを好きになりたくない」

 だからこそ、これ以上好きになりたくなかった。
 エリナは、クーを好きだと思う心を押さえつけてきて、それも難しくて、だからぐちゃぐちゃになってしまった心で、クーを見ないように努力してきた。

 それなのに、今みたいに、こうやって、エリナを心配してそばにいられてしまえば、耐えることができない。
 クーを好きになる気持ちを、押し殺せなくなる。

「ここから逃がして、お願い、あなたの傍に居たくないの」

 エリナは泣いた。
 顔をぐしゃぐしゃにして、涙で顔を汚しながら、額に添えられたクーの手を払いのける。
 ここに居たくない。クーの傍にいて、やさしくされてしまえば、そう遠くない未来にクーを愛してしまうだろう。

 そうしたら、エリナは今よりもっと苦しむことになるのだ。
 番なんてむなしいだけだ。かなうなら、人と恋がしたかった――嫌だ、クー以外と恋なんてしたくない――そんなの、気のせいだ。
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