竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「エリー、聞いて」
「いや、いやよ、いや、いや……嫌い。クーなんて嫌いよ……」
クーの言葉を否定する。
そうやって、首を振って、この気持ちを霧散させる。
芽生える前に、恋心を摘み取るのだ。
「エリー、僕は、あなたが好きなんです」
「番だからでしょう?私、番を嫌いだって言ったわ」
「ええ、覚えています。僕は、あなたが嫌がると知っていてここに連れて来た。それも理解しています」
「それじゃあ、なんで」
鐘の音が、記憶の中で響く。からんからんと鳴り響き、エリナを責めてやまない。
お前のせいでクリスが死んだと、お前は誰にも愛されないと、お前を愛する者は、もはやどこにもいないのだと責め立てる。
けれど――けれど、クーは。
クーは、やさしく、春の日だまりのような笑顔で、微笑んで見せた。
まるで、あの日のクリスみたいに。
「あなたを、守りたかったから」