竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
豆を煮たて、それを濾して豆のミルクを作る。
肉は兎と、わずかなジャガイモとニンジンのみ。
王宮ならもっといい材料もあるし、実際厨房でこれをどうぞ、といただいたのは非常に質の高い高級なジャガイモやニンジンや豆だった。
高級品で作る節約レシピというアンバランスな料理を少しだけおかしく思いながらも、クーのリクエスト通りのものを作る。
クーは本当にこれが好きだ。
エリナは、かつてクリスに作ってやった同じレシピのシチューを思い出してくすりと笑った。
クリスも、エリナがこうして作る料理を喜んでくれた。
そう、クーの喜びかたも、同じメニューを何度もリクエストしてくるところも、クリスによく似ていた。
そういえば、はちみつ色の髪も、緑のアーモンド形の目だってとてもよく――……。
からん、からん、と記憶を揺さぶるような鐘の音が聞こえる。
いいや、実際にはそんな音がしていないのだろう。ただ、いつからかエリナの頭に耳鳴りのように響くようになったこの音は、それまでエリナが考えていたことを攫うようにして忘れさせてしまう。ほら、今も。