竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「……あれ、なに考えてたんだっけ」
エリナは首を傾げる。
シチューをかき混ぜる手が止まっていることに気づいて、あわててお玉をかき混ぜたけれど、今考えていたことはもう思い出せない。
忘れっぽいのも困りものね、とエリナは苦笑して、出来上がったシチューに厨房の人が用意してくれたパンとサラダを添えて――さすがプロ、エリナの作ったものよりずっとおいしそうだ。実際、毎日食べていてとても美味しい――ダーナに運ぶのを手伝ってもらいながら、晩餐用のホールにある、大きな卓に並べていった。
そろそろ部屋の外に出てみたい、というエリナの意をくんで、クーが整えさせてくれた部屋は広い。けれど、エリナが選んだ調度がセンス良く配置されていて、王宮という公にも触れる場だと言うのに、どこか家庭のような温かみがあった。