竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
召使たちがくすくすと笑っている。みじめなエリスティナをあざ笑っている。
だってエリスティナは覚えているのだ。
今エリスティナを笑った召使のひとりが、エリスティナに黴の生えたパンを投げてよこしたことを。
だからこれは、きっと、もともと予定されていたことだった。
エリスティナとカヤの通る時間を合わせ、鉢合わせるように仕向け、エリスティナをいじめるための口実にカビの生えたパンを持たせる。
とことん竜種とは醜悪な生き物だ。
いまだ黙ったままのエリスティナに業を煮やしたのか、カヤが手を振り上げた。
ぱん。乾いた音があたりに響く。
栄養失調で体力がないせいで、エリスティナの体は大きくよろけたけれど、エリスティナは足に力を籠め、みじめたらしく地面に這いつくばることだけはしなかった。