竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 食前の祈りを捧げ、めいめいにスプーンをもって食事を摂る。
 ダーナは上品にサラダから。エルフリートはパンをシチューに浸して――エルフリートは種族的に霊体なので、柔らかいものが好きらしい――そしてクーはというと。

「クー、シチューを食べるたびに泣かないでよ……」
「す、すみません、どうしても嬉しくて……エリーのシチューがおいしくて……」
「もう……」
「うわすごい、私陛下が泣いてるところ初めて見た」
「あなた?」
「ごめんごめんダーナ痛い痛い痛い耳引っ張らないで」

 シチューを一口口に運ぶたびに大粒の涙をその美しい緑の目からこぼすクーと、それに大笑いするエルフリート、エルフリートをたしなめるダーナ。

 エリナを入れて四人しかいないのに、広すぎるともいえるこの広間が狭く感じられるのは、心を許せるひとばかりの場で、楽しく食事ができているからだろうか。
< 260 / 315 >

この作品をシェア

pagetop