竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 エリナは、クーが現れてから、クーと出会ってから変わった日常が嫌いではない。
 いいや、はじめは、怖かったし、嫌だと思っていた。
 けれど、こうやって幸せな毎日を送れるなら、これがいいんじゃないかと思えて来た。

 ダーナも、エルフリートも優しいし、クーのことは好きだし。
 だから、これがハッピーエンド、だなんて銘打ってもいい気がして。
 そう、思って、いる。

 ――本当に?

 ふいに、頭の中で鐘が鳴る。
 遠くから響く、幽鬼のような声。幸せを否定するようなその声は、エリナの背筋を震わせた。

 少し動きを止めたエリナの背を、クーの手があたたかく、やさしさをもって滑る。
 それではっと我に返ったエリナは、心配げにこちらを見るクーに、どうして気付いたのかしら、なんて思いながら、シチューの続きを食べはじめた。
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