竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
クーはしぶしぶと言ったように頷いた。これは仕事にならないかもしれないわね、と思ったけれど、親離れさせるのも大事なのだ。
……あれ?どうして、親離れ、なんて思ったのかしら。
からん、とちいさな音。と同時に、それはペンダントによって吸い込まれるように掻き消えてしまった。
いつものような頭痛は襲ってこない。
とにかく!と、エリナはそれをいいことに、クーの背中をぐいぐいと押して部屋から出してしまった。
「あとでまた会いましょ、クー」
「何かあったら呼んでくださいね、絶対ですよ」
そう言って、クーが閉まる扉の向こうに消えていく。
エリナはそれを見送ってから、使用人用の呼び鈴を鳴らしてダーナを呼んだ。
「ダーナ、散歩に行きたいの。付き合ってくれるかしら?」
エリナの言葉に、ダーナはいつものようにゆったりと、目じりにしわを寄せて微笑んだ。
「ええ、もちろんです。ご一緒しましょう。エリナさま」