竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 そこには――そこには、白く、よく磨かれているらしい石。こじんまりとしたその石は、墓石のようだった。
 たくさんの花に他よりずっと多く囲まれて、まるで花に埋もれるようにして鎮座している。

 エリナは恐る恐る墓石に近づいた。
 名前、名前が、知りたかった。この墓の下に眠る人の名前――が……。
 ……はたして。

「最愛の人、エリスティナ・ハーバル」

 字を指でなぞるようにして読み上げる。ダーナがはっと息を呑む音。エリナを案じているのがわかって、だからエリナは大丈夫よって、そう言わないといけないのに、ああ――ああ――!

 エリナの眦から涙がこぼれる。
 頭が痛い。がんがんと鳴る頭、からんからんと響く鐘の音。
 この鐘が、エリナの記憶を邪魔しているのだ、エリナは頭を振って、その場にしゃがみこんだ。

「エリー!」

 遠くから、エリナの様子を見ていたのだろう、クーの声がする。近づいてくる。
 さっき分かれたばかりじゃない、と笑わないと。ああ、でも、今それどころじゃなくて。
 あと少しで手繰り寄せられそうな記憶の欠片に手を伸ばす。
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