竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 無邪気に、誰を犠牲にしてもいいと思う愛。それも確かに愛だろう。けれど、それでは幸せにはなれない。
 エリナはカヤを憐れんだ。
 その、哀れみを、理解したのだろう。けれど、納得はできなかったのに違いなかった。

「アアアアアアアアアア!!」

 カヤが咆哮する。獣のような声が周囲に響く。到着した警備兵たちが遠くに見えて、エリナがほうっと息を吐いたとき。クリスが「危ない!」と叫んだ。
 ――瞬間、カヤの髪が膨れ上がった。


 カヤの胸、心臓の位置に、光るものが見える。それはどす黒く汚れていて、ひび割れているように見えた。
 しかしそれも一瞬のことで、吹きあがる腐臭に一瞬目をつむったエリナが次に目を開けたとき、カヤの体はぼこぼこと膨れていく最中だった。

 黒い瘴気がカヤの体にまとわりつき、それが肉のようになってカヤの体を大きくしていく。
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