竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

「呪いを生むもの……」

 クリスがつぶやく。呪い、とエリナは繰り返した。
 やがて、カヤの体はすっかり黒いもやに覆われた。びたり、と一歩足のようなものが動くたびに周囲の土が腐り溶ける。

「あれは、人間種や竜種が体に呪いをため込みすぎたときに発生する現象です。普通、そんなに呪いを蓄積すれば人間種も竜種も死んでしまう。けれど、そうならない場合に、あれが起こります」

 クリスが、エリナの胸元に視線を落とす。
 そこには、エリナを瘴気から守っているクリスの逆鱗があって。

「まさか……」
「ええ、カヤは逆鱗を体に取り込んだのでしょう。だから呪いを許容量以上に溜め込んでも生きていられた。そして、呪いを生むものになってしまった。あれは厄災です。放置すれば国どころか世界が危うい」

 クリスはそう言って、カヤを縛る鎖を増やした。ぎちぎちと縛られた鎖にほころびはない。
 カヤだったものは、身動きが取れず、そこに縛られている。
 しかし、カヤ――いいや、呪いを生むもの、は、今度は地面に音を生やし、生み出した触手でエリナを攻撃しようとした。否、触手は、周囲にいた警備兵たちをも巻き込もうとした。

 クリスが跳躍する。触手は、エリナを捉えることができず、空を切る。
 しかし、それでひとつ、鎖がちぎれた。
< 294 / 315 >

この作品をシェア

pagetop