竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 クリスがエリナや周囲のものを守るために魔力を割いたからだ。

「クリス!」
「……ッ」

 痛みが跳ね返っているのだろうか。クリスが眉間にしわを寄せたのを見て、エリナがその顔を覗き込む。
 クリスは笑って、大丈夫です。と言った。

「エリー、あれを、救いたいと思いますか」
「クリス?」
「あなたは、あれを憐れみました。だから、僕はあれを封印するのでも構いません。それがあれへの救いになるのかはわかりませんが、消滅することはなくなります」

 クリスはそう言って、エリナを見つめた。
 そんなことを考えていたのか、とエリナは思った。
 思って、そして、こんな時にすら、エリナを優先するクリスに、どうしようもなく胸を突かれるような感情を味わった。
< 295 / 315 >

この作品をシェア

pagetop