竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 クリスが地に降り立つ。エリナを地におろし跪くと、一拍ののち、クリスは咆哮した。
 それは、宙に浮いたガラスを鳴らすような、静謐な音。
 周囲一面に、星屑のような光が散っていく。

 クリスの額から、角が現れる。背に、ガラスのような薄い、日の光を受けて虹色に輝く翼が生えた。
 綺麗だわ、と、こんな時なのに、そんなことを考える。

 クリスの咆哮が、散った光に跳ね返って反響する。
 リィン、リィン、と輪唱する音。それは、まるで祈りの言葉のようで。

 エリナは胸の前で両の手を組んだ。
 これは、カヤへの、憐憫を込めた祈り。
 次に生まれてくるときは、せめて幸せを間違えませんように、と。

 呪いを生むものの周囲に、ゆらゆらと揺らめく白い炎が上がる。
 その白い炎は、熱を持ってはいなかった。
 クリスが顔を上げ、呪いを生むものを見つめる。
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