竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
かきあげた髪からクリスの瞼が見える。長いまつ毛がふるふると震え、やがてその中から緑色の目が姿を現した。
「……エリー?」
「おはよう、クリス」
こんな風に、ただ挨拶できることが幸せでたまらない。
エリナは穏やかな笑顔のまま、クリスの頭をくるむように抱きしめた。
「エリー、起きたんですね」
「うん、起きるのが遅くなってごめんなさい」
「いいえ、あんなことがあったんですから、疲れて当然です」
クリスは、エリナに抱かれていることに気づいたのか、少し顔を赤くして、エリナの腰に手を回した。
「あたたかい……」
「そりゃあそうよ、生きてるんですもの」
「そう、そうですね。エリーは、生きてる……」
どこかぼんやりしたように、クリスはつぶやいた。
エリナがここにいることが、奇跡みたいだ、そう思っていることが、手に取るようにわかった。
「ずっと、会いたかったの。クリス。あなたに」
「はい」
「でも、喪ったと思って、クリスは死んでしまったと、そう思って。ずっとあきらめていて……」
それ以上は言葉が詰まって言えなかった。
エリナはクリスの頭を解放し、代わりにその頬を両の手で包んだ。
クリスがここにいることを、確かめるみたいに。