竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

クリスは目をそらした。
なおもエリナが見つめると、恥ずかしそうに耳までを赤くして、ぼそぼそとつぶやく。

「エリーに、ふさわしい男になりたかったんです。そう言う本を読んで……もう癖になってしまいました。こんな風にしゃべるのはエリーにだけです」
「ええ、敬語を外してよ。距離が遠いみたいだわ」
「無理です。もう僕にとってエリーは女神で大事な番で好きな人でっ。そんなエリーにあんな粗暴な口調を使うなんて考えられません!」
「ええー……?」

クリスが無理だ無理だと言って手を顔の前で振るから、エリナはそれが面白くなってしまった。かっこいいと思っていたけれど、こういうところはやっぱりかわいい。
ふうー……、と息を吐いて、エリナはクリスに向き直った。
そう言えば、エリナから言っていないことがあるんだった。と思って。

「ねえ、クリス」
「……はい、エリー」

エリナを恐る恐る見上げるクリスは、やっぱりかわいい。
エリナはクリスの手をぎゅっと握って、もう一度笑った。
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