竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
式の始まりが迫っていることを告げる召使がやってきた。
エリナははっと我に返って、けれど笑顔でクリスの手を取る。
「エリー?エリーはエルフリートと入場のはずでは……」
チャペルで、エリナが父親役のエルフリートと腕を組んでクリスのもとへ歩いていく、という段取りのことを言っているのだろう。
エリナはいいの、と短く返した。
不思議そうな顔をするクリスに、言葉を続ける。
「エリスティナだったころはあなたを守ったわ。でも、今生で出会ってからはあなたが守ってくれたもの。今度は一緒に、守り守られて歩きたいの。隣で。ふたりで」
そういって笑ったエリナに、クリスは一瞬呆けたような顔をした。
けれど、だんだんと意味を理解したのか、その表情がほころんで――男の人にこんなことを言うのはおかしいかもしれないけれど――クリスは、花が咲くように笑った。
「ええ――ええ。エリー、一緒に歩きましょう。もう離れないように、ずっと隣で」
「そうね、クリス。最後の最後まで――……いいえ、その先も、あなたと一緒にいたいから。……これは最初の一歩なんだわ」