竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~

 エリスティナを糾弾したいだけなら、卵が盗まれたものだと言えばいい。
 そうしないのは、エリスティナを王妃の座から引きずり下ろすため。

 王妃が不貞を働けば、死罪は免れない。だから、この大声はエリスティナを排除するためのものなのだ。
 エリスティナは、そこに、少女めいた容貌をしたカヤの、女としての恐ろしさを感じて背筋を震わせた。

 なんだなんだと衆目が集まってくる。
 カヤはそれを確認して、満足げに頷いた。

「不貞で生まれた卵なんていらないわよねえ」

 カヤがそう言って、その卵を地面にほうった。

 ――なんてことを!

 エリスティナは自分を捉える召使たちを振りはらい、飛び込むようにカヤの落とした琥珀色の卵を受け止めた。
 顔が地面にぶつかって、口の中に血の味が広がる。

 けれど、エリスティナはまず卵の様子を確認した。ひびがなく、ほのかにあたたかい。
 エリスティナはまだしっかりと鼓動を繰り返している卵をそうっと抱いて、微笑んだ。
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