竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「そんな卵は……」
そしてその狂気はエリスティナに向かう。憎しみのこもったまなざしの先には、まだ生まれてもいない無垢な命がある。とっさに体を丸めて卵を守るエリスティナ。
カヤが振り下ろした拳が卵にぶつかる前に、エリスティナは叫んでいた。
「お待ちください!」
突然のエリスティナの大声に、カヤの動きが一瞬止まる。
ぎゅっと卵を抱きしめて、エリスティナは言い募った。
「そんなことをすれば、リーハ竜王陛下が黙っておられません」
「黙るわ。リーハは私に甘いもの」
「ええ、でも、ほかの竜種は、まがいなりにも同種を弑したことを許すでしょうか。番様が竜種を殺せば、竜王陛下の御世が乱れかねません」
「そんな、こと……」
「同種を殺したあなたを、王妃にふさわしからぬというものが現れかねません。どうぞお考え直しください。まだ生まれてもいない命です。どうか、どうかお慈悲を……」