竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 エリスティナの言葉に思うところがあったのだろう。
 わずかにうろたえたカヤに、今しかない、とエリスティナは続けた。

 地に頭をこすりつけて訴えて――そのさまに、カヤの溜飲が少しでも下がるようにと願いながら。
 この卵のためなら矜持なんていらない。いつの間にか、そう思ってしまうほどに、エリスティナはこの卵を守りたく思っていた。

 その時だった。

「カヤ……どこだ……!」

 番の動揺を感じ取ったのだろうか。竜種にはそういう能力があると聞いた。
 竜王、リーハ――番を守らんとする竜種が、烈火のような赤い翼を広げ、エリスティナとカヤが対峙するこの場に降り立ってきた。

「リーハッ!」

 カヤがリーハを呼ぶ。
 いつの間にかカヤは目に涙を浮かべていて、だから目の前に平伏しているエリスティナがいるというのに、リーハはかっとその目を見開きカヤを抱きしめ、エリスティナを睨みつけた。
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