竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
頭上から降って来た粘液をひょいとよけて――その粘液は地面に落ちると岩を溶かしてじゅうと音を立てた――エリスティナは道なき道を進む。
目指しているのは、何代か前の変わり者の竜王が余生を過ごすために建てた(それも自力で!)という森小屋だ。
森の中央にあるらしいそこ目がけて、エリスティナは川に沿って歩き続けていた。
「よしよし、きっともうすぐ着くからね」
首に下げた小さな革製の袋に向けて、エリスティナは笑った。
川にそっても目的地につくとは限らない。けれど、そう進むしか道はないのだ。
「思ってたより襲ってこないし、不帰の森なんて言っても大したことないじゃない」
エリスティナはそう言って、エリスティナを絡めとろうとした木の蔓を逆につかみ返し、その先端にくっついたみずみずしい橙色の実をもぎ取ってかぶりついた。
甘い。
オレンジにも似たあまずっぱさはあるが、エリスティナの知るそれより格段に甘みは上だ。