竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「番、番……そうか、番……」
「どうしたの?クリス」
クリスがなにやら気づいたようにしてぶつぶつとつぶやく。
その理由を尋ねたエリスティナに、クリスははっとしたような表情を浮かべた。
ぱちり、とエリスティナとクリスの視線が合う。
とたん、ぶわわ、と耳まで赤くなるクリスに、エリスティナは仰天した。
「クリス!?どうしたの、熱があるの?」
「い、いや、ない。ないよ、エリー!大丈夫!」
首を横にぶんぶんと振るクリスをしばし見つめて、エリスティナはそう?と首を傾げた。
竜種の生態については勉強しているけれど、まだまだわからないことがいっぱいだ。
「体調が悪くなったらすぐに言うのよ」と言い含めて、エリスティナは夕食のために洗濯を手早く済ませてしまうことにした。
今日は兎のシチューだ。クリスが大好きなメニューだから、気合が入るというもの。
エリスティナは、この生活が永遠に続けばいいのに、と思った。
それが、たとえ、かなわない夢だとしても。