竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
ここの生活には足りないものが多くある。調味料は、もともと貯蔵されていた塩と胡椒だけ。だから、エリスティナは兎の骨と、先日クリスが獲ってきてくれた鳥のガラから取ったブイヨンと塩、それから大豆から取ったミルクのようなものでシチューを作った。本当は、ちゃんとしたミルクで作った、バターもたっぷり使ったシチューを食べさせてあげたい。
けれど、追放されて久しい身ではそんなものを入手するべくもない。
かつての竜王だって、さすがにこんな森のなかで牛を飼うなんて想定していなかっただろう。
そりゃあそうだ。「竜王」はこの森を出入りし放題なのだから、わざわざ苦労してそんなものまで手作りする必要はない。
「ミルクだってないし、卵も……森の鳥が産んだのを見つけたときだけだから、あまり食べさせてあげられないし」
エリスティナは指を折って足りないものを数える。
そうやって数えるたびに、エリスティナは自分の力不足を感じてしまう。
だけれど、クリスはまるでお日様のような笑顔を浮かべて言った。