竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 声も背丈も何もかも違うのに、その目の奥に見えるやさしい色が、クリスとダブってしまった。
 感傷に浸りそうになって、エリナは鍋に向き直る。焦げては失敗だ。ゆっくりゆっくり、弱火で煮込むのが肝要なのだ。

「……きゃ!ちょっと、あなた、危ないわよ。火を使ってるんですからね」
「シチュー、ですか?」
「……そうよ。もうすぐできるって言ってるのに。そんなにおなかがすいてるの?」

 いつの間にか背後にぴったりと張り付いていた青年に驚いて悲鳴をあげると、青年のはちみつ色の髪が揺れた。

 けれどすぐに、おなかを押さえる子供みたいな動きと、次いで聞こえた「ぐぎゅうううう」という地鳴りにも似た大音量に、エリナは思わず声を立てて笑ってしまった。

< 76 / 315 >

この作品をシェア

pagetop