竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
「ふふ、あはは!もう、大丈夫よ。シチューは逃げたりしないから」
「あ、ええと、あなたは……」
「私はエリナ。あなたは竜種?身なりがいいから、竜種の貴族かしら。だめよ?竜種だからって、竜種の生命力に胡坐をかいて食わず嫌いしてちゃ」
「僕は……ええと、その」
「大丈夫よ。名前は聞かないわ。こんなところで行き倒れてるなんてたいてい訳アリですものね」
名を聞かれて口ごもった青年の言葉を掬うように、エリナが続ける。
ほっとしたように青年の目が細くなった。
「……ありがとうございます」
「でも、あなたを呼ぶとき困るわね。……ううん、そうね、あなたのこと、クーって呼ぶわ」
「クー?」
「昔の知り合いの名前からとったの。あなたと目が良く似てるから、クー。いいでしょう?どうせご飯を食べて帰るまでだし」