竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
エリナは目をそらした。だって、どこからどう見たってこれは普通のシチューだし、味付けだって取り立てて特徴のあるものでもない。
なにかの間違いでそう思っているのかもしれない、と思ったけれど、そう思うにはこの青年――クーの態度は奇妙過ぎた。
「おいしい、おいしいです、とても」
「それは、よかった、わ?……でも、本当に、普通の味付けしかしていないのよ」
「僕にとっては、特別な味なんです……」
クーはそう言って、おいしい、おいしいと何度もシチューをお代わりした。
もう数週間はなにも食べていない、みたいな食べっぷりに驚きつつも、エリナはクーが食事をする光景を、どこか懐かしい気持ちで眺めていた。
「クー、私の分も食べていいわよ」
「それは、さすがに」
「ふふ、変なところで遠慮するのねえ、あなた」
「女性の食事を奪うような教育は受けていませんよ」
「教育、教育、ねえ」