竜王の一途な溺愛~私が前世で孵した卵は竜王の卵でした!?~
 エリナがジト目でクーを見やると、クーは自分の食べたあとの、空っぽの鍋から目をそらした。
 明日のお昼に、そしてグラタンに仕立て直して夕食に、と思っていたシチューは、もうすっかりなくなっていた。

「すみません……」
「別にいいわよ。気にしていないし。一人で食べるのも味気ないものね」

 エリナはすっかり冷めてしまったシチューを口に含む。うん、やっぱり冷めてもおいしい。
 もくもくとエリナがシチューを味わっていると、クーははっとしたようにエリナのシチュー皿を見た。

「冷めて……!?」
「そりゃあ、あんなに泣いてたんだもの。泣き止むまでには冷めるわ」

 そう言って、エリナがもうひとくち掬って口に運ぶと、クーはがばっとエリナの手元にあるシチュー皿に手をやった。

「クー?」
「失礼します」
< 86 / 315 >

この作品をシェア

pagetop